広島国際大学総合リハビリテーション学部
リハビリテーション学科理学療法学専攻
徳森 公彦
このたび、第23回広島県理学療法士学会を東広島市で開催させていただくことになりました。東広島は広島県のほぼ中央に位置し広島市、三次市、福山市など各方面からのアクセスも良好ですので、ぜひ多くの先生方のご参加をお待ちしております。
さて、本学会はテーマを「温故知新~昭和を知り、平成を振り返り、その次の時代へ~」とさせていただきました。我が国に理学療法士が誕生して50年以上が経過しましたが、その間には高度経済成長、バブル経済、震災や津波などの甚大な自然災害、リーマンショックなどの世界的な経済不況、ゆとり教育の実施と廃止、社会の超高齢化など、さまざまはイベントが起こりました。この間に理学療法士に期待される役割や、教育環境も大きく変化したのではないでしょうか。
現在50、60歳代の理学療法士は昭和という時代を中心に教育を受けました。スパルタ式に根性論や経験則に基づいた教育を中心に受けていた時代ではなかったでしょうか。しかし、その根性論や経験則を、科学的な根拠へと格上げするために地道な努力を惜しまなかった時代であったと思います。
一方、現在の理学療法業界の主流である40歳代以下は、平成という時代に入り教育を受けました。平成の教育は昭和の先輩方が行われた臨床・研究の知見から作成されたガイドラインや、システマティックレヴューなどを基に、科学的根拠に基づいた理学療法の提供の重要性が叫ばれました。しかし、それはすでに出ている答えを覚えるという教育であったように思います。さらにここ15年の間には目覚ましいITの進歩やインターネット環境の普及など、指先一つで世界中の情報を簡単に集められるようになりました。その反面、情報の真偽を確かめることなく信じ込み、答えの見つからないものは分からないと簡単に諦めてしまうことも多くなったのではないかと思います。一日一日と時代は着実に進んでいます。未曽有の超高齢社会の中で理学療法士のあるべきという姿(答え)は、インターネットでいくら過去の研究を調べてみても見つけることはできません。
近年、地域包括ケアの構築に重視されているのが互助の精神です。これは昭和の日本には当たり前にあった価値観です。先輩を敬い、近所で助け合い、自分が頑張れば国全体が良くなるという価値観のもと、みんなが同じ方向を向いていた時代ではないでしょうか。
昭和の先輩から過去の精神を教わり、平成の若者から現在の便利さを教わる。それぞれの良さを認め、尊重して補い、次の時代へ対応できる進化した理学療法士の価値観・役割を作りあげていく時期が来たのではないでしょうか。そんな議論ができる学会となることを期待してスタッフ一同、皆様のご参加を心よりお待ちしております。